駅前の商店街がまだ機能していた頃。

高校の頃、電車通学だったのだが、地元の駅前に喫茶店があった。
何を思ったか、と言うか、恐らくは中二病の延長線上だったと思うのだが、週一のペースでそこに入り浸っていた。

その店はカウンターとテーブル席があり、最初に入った時からカウンター席に座ってずっとそのままだった。
あとでマスターが話してくれたところ、最初からカウンターに入るやつは大体おかしなやつで、こいつもそうなんだろうな、と思ったらしい。
大体コーヒー1杯で数時間いた気がするので、まあ金にはならない客だった。高校生というのは制服を着ているところからも明白なので、その辺の期待は元々されていなかったとは思うが。

日によってそれぞれだったが、そこにはマスターとその奥さんと妹さんがおり、当時の私にとっては全員年上だったのだが、若い人は殆ど来ない古めの喫茶店だったこともあり、大層よくしてもらった。
その妹さんにはよくからかわれていたのだが、当時の私にとってはとても嬉しかったので、その人目当てに行っていたと言われたらまんざら嘘ではないだろうとは思う。

そのマスターからはブルーマウンテンも高いだけで大して美味しくないんだよ、と言われ、余ったブルマンをタダで飲ませてもらったことはよく覚えている。
確かに酸っぱさはあるけど、それほど美味しいとは思えなかった。
なので、それ以降殆ど飲んだことはない。

高校卒業前に、この店はもうやめて別の場所で居酒屋を作るんだよそっちにも来てね、と言われて、はい行きますね、と言ったのだけどそれから一度も顔を出していないままもう20年以上経つ。

地元の駅に降り立つ時に、いつもその店の跡地を見るのだけど、その喫茶店に行っていたこと自体誰にも言ってない話なので、思い出すだけで話はしないことにしている。